朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


「ん? 今度はどうした?」
 

咲桜の突然言動に対しての応策が「今度はどうした」になってきた。


「だって、私こんな素敵なものもらっちゃって……中途半端な完成度のケーキしか作ってなくて……プレゼント。何かほしいもの、ある?」
 

真っ直ぐに見てくるから、言葉に詰まった。


それから、そうだなあ、とわざとらしげに口元に手を当てている。


咲桜はドキドキしているような、期待しているような、そしてどこかおっかなびっくりな眼差しだ。


「キス。咲桜からほしいな」


「……………え?」
 

咲桜は欠片も考えていなかったのか、ぽけっとした。


「咲桜からキスもらえたらそれ以上はないな」
 

紳士然と咲桜の手を絡め取って指先に唇を落とした。


途端、爆発したかと思うくらいに咲桜の顔が真っ赤になった。


えーと、えーと……と、咲桜は唸り出す。


それを楽しい気持ちで見る。


――どこまでが今の咲桜の許容限界なのか、測ってみるのもいいかもしれない。


「――わかりました」

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