クールな上司は確信犯
◆おまけのお話その2◆

きっかけ

有希が仕事をしていると、同僚が興奮気味に席に戻ってきた。

「さっき和泉課長に会ったんだけど、挨拶したら微笑んで返してくれた!こんなの初めて!」

無愛想で怖いと言われている和泉が、最近柔らかくなったと評判がいい。
噂でしか聞いたことがなかった同僚は、ついに自分もその姿を見たと興奮して伝えてくる。

「和泉課長に会ったんですか?いいなー。」

自席から滅多に離れることのない有希は、仕事中に和泉に会う機会がないに等しい。
思わず本音が漏れてしまう。

「何言ってるの、岡崎さんはいつだって会えるでしょう?」

有希と和泉が付き合っているという噂は、和泉のせいで瞬く間に広がった。
今では周知の事実になっている。

「そういえば馴れ初めを聞いてなかったわ。」
「はい?」

いつも無駄話を止めてくれる課長がいないのをいいことに、同僚はここぞとばかりに身を乗り出した。

「ええっ。えっとぉ、何といいますか、私の一目惚れ?です。」
「じゃあ、岡崎さんからアプローチしたってこと?」
「いや、そういうわけではないです。」

何それ~と同僚は笑う。

有希は面接の時、和泉に声を掛けてもらって頭をポンポンとされた。
その仕草と微笑んだ顔がずきゅんと胸を貫き、一目惚れをした。

そういえば、和泉さんは?
和泉さんが私を好きになった理由は何だろう?
聞いてみてもいいのかな?
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