誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 だが、意気込んだ小春の気持ちは、シュルシュルと空気の抜けた風船のようにしぼんでしまった。

「誰も……いない……」

 そう、自宅マンションには誰もおらず、真っ暗だった。

 時計の針は夜の九時を回っている。
 レストランで働いているに違いない父はまだしも、美保は家にいるはずだ。

「もしかして、美保さんも店かな……でも、手伝うのはお昼だけだし」

 クリスマスが近いので、手伝いに行っているのかもしれない。
 とりあえずそう自分に言い聞かせる小春だが、家中の明かりをつけていくうちに、異変に気が付いた。

「なんだか、荒れてる……?」

 一見、物は整理整頓されて片付いているように見えるのだが、テーブルの上や水回りに、うっすらと埃がかぶっている。

 美保は小春に負けず劣らずの整理整頓好きで、じっとしていられないタイプの人間だ。小春が一緒に暮らしていた時期は短いが、「性分なのよ~」と笑いながら、ちょこまかとあちこちを拭いたり片付けたりしていたことは忘れられない。


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