誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
学生の頃から弁護士になることを考えていたはずだ。てっきり、壮大で大きな理由があったのではないかと思っていた小春は、少し驚いてしまった。
【まぁもちろん、自分が養子だってことがきっかけにはなってるよ。だけどね、法律を好きになったのは、元の家族や今の家族に対して、特別思う事があったからではないんだよね】
「じゃあ、どうして……?」
【戸籍に“五男”って書いてたからだよ】
その瞬間、はっきりと口にした閑の顔が、小春の脳裏に浮かんだ。
それはどこか清々しさを含んだ、閑の強さだ。しっかりと二の足で立ち、背筋を伸ばし前を見ている。
そんな閑の姿が、手に取るようにわかったのだった。
【それまで俺は、神尾の家でひとりだけ見た目が違う、異分子だって思っていた。だけど五男という文字をじっと見ていたら、ああそうか、血が繋がっていなくても、俺はこの家の五男なんだ、お父さんとお母さんの、実の子どもなんだって、思ったら、安心できたんだ。法律ってすごいな、面白いなってね。それが理由。それだけだよ。だからそんな褒めなくていいって】
そして閑はクスクスと笑った。
天職だと言われたことに対して、照れての謙遜のような雰囲気ではあるが、閑の真意はわからない。