誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
夕方、店に顔を出すだけと言っておきながら、まさかの店の繁盛ぶりにいてもたってもいられなくなったらしく、調理場にに入り、大将と肩を並べて調理をしている。
小春も父に、買い出し含め、あれやれこやと指示をされながら、忙しく働いていた。
今日は最後の営業ということもあり、昼から休みなしで、店は開きっぱなしだ。そして夜の九時に閉めるはずだったのに、最終的には、年越しそばを食べようということになり、まさかの延長。店はワイワイと大繁盛である。
プロの父が手伝えば、百人力だろう。
(人手が足らなかったから、助かったけど……まぁ、いいか)
楽しそうに、並んで包丁を握る大将と父の背中を見つめていると、
「小春ちゃん、彼が来たわよ」
佑二と同じように、店を手伝ってくれている美保が、いそいそとやってきて、笑顔で小春を手招きした。
「あっ……」
言われて見れば、入り口に槇と閑が立っている。ふたりともスーツにコートを羽織っていた。
個人事務所ゆえなのか、年末ギリギリまで仕事をしていたふたりではあるが、どこか晴れやかな顔をしている。
「お疲れ様です!」
小春が入り口に向かうと、槇が店内を見回して、驚いたように目を丸くした。