誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「黒坪さん、笑うのやめてもらっていいですか……。はい、俺が悪かったです。朝から拗ねるのやめます。ごめんなさい」
閑は溜息をつき、しぶしぶ上半身を起こした。
「ふふっ……。からかってごめんなさいね。お茶でも淹れましょうね」
黒坪は銀縁の眼鏡を指で押し上げながら、「ふっふっふ」と笑いながら、給湯室へと向かっていった。
「はぁ……」
閑は、ソファーの背もたれに背中を預け、天井を見上げる。
(やっぱ俺、嫌われたかな……いやでも、同居はしてくれるって言ってくれたから、嫌われるまではいってないよな……たぶん……たぶん……)
我ながら本当に最低だと思うが、彼女と体を重ねた昨晩のことはまったく後悔していない。
槇が帰宅した後、少し酔って目の縁を赤くした小春に、潤んだ目で見つめられていることに気づいてから、閑は自分が抑えられなくなった。
『神尾さん……』
彼女に、消えいるような声でささやき、じっと見つめられた時、男として、求められている気がした。
その瞬間、閑は『弁護士』であることを忘れて、ひとりの男になってしまったのだ。