誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 遅れて閑がやってきて、向かいの椅子の上に荷物を置いて、ずらりと並ぶ店を見つめる。

「さて、何食べる?」
「私は何でも。好き嫌いもないし、同じものでいいです。飲み物はお茶がいいくらいで」
「わかった。じゃあそこで買ってくるから、小春ちゃんはここで待っててね」
「はい、ありがとうございます」

 小春はペコッと頭を下げて、ハンバーガーショップの列に並ぶ閑を五メートルほど離れた場所から、見守った。

(なんだか普通に……自然にできてるな……あんなことがあったなんて、信じられないくらいに……)

 自分と閑は、食堂の店員と、常連客。それから依頼者の関係者と、弁護士。
 どこにでもあるような細い糸でつながった関係だったはずだ。

 だが閑は、必然的に出て行かざるを得なくなった自分を、家に招き入れようとしてくれた。

 それは間違いなく、弁護士の仕事としてではない。知人・友人としての好意だ。

 途中、流されるように体を重ねてしまったけれど、小春の望み通り、閑はあのことを忘れてくれている。

 きっとこのまま、日々、何事もなかったかのように、時は流れていくのだろう。

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