誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「どこ空いてるかな……」

 小春が少しだけ背伸びをして周囲を見回していると、三十センチ高い閑が、

「窓際、空いてるの発見」

 と、得意げに口にした。

「えっ、どこ?」

 小春はますます背伸びをしたが、よくわからない。

「ほら、ハンバーガーショップの斜め前の。奥のテーブル」

 閑が小春の背後に回って、耳元でささやいた。

「わかる?」
「っ……」

 その瞬間、小春は跳ねるように背筋を伸ばしていた。

 閑の唇が、耳に触れたような気がしたのだ。

 だがそんなはずはない。あくまでも自分が意識しすぎているだけで、閑がここでそんなことをするわけがない。吐息が触れただけだ。

(び、びっくりした~!)

 小春はドギマギしながら、閑を振り返らないまま、早口になる。

「わっ、わかりました、席まず取った方がいいですよね! ハンバーガーでもいいかな~!」

 小春はいそいそと、空いた席に向かって、椅子に腰を下ろした。


< 86 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop