明治蜜恋ロマン～御曹司は初心な新妻を溺愛する～
「あやさんは、華族の家のご出身だとお聞きしましたが」
「はい、そうです」

「それならば、こうしたパーティでどうされるべきかおわかりでしょう？　くれぐれも我が社の足を引っ張るようなことはお控えください」


ごく当然の指摘をされただけなのに、胸にギュッとつかまれたような痛みが走る。

行基さんもそして一ノ瀬さんも、物腰柔らかで私を優しく包み込んでくれるような温かさがあるけれど、藤原さんにはそれを感じない。

氷のように冷たい空気を吹き込まれたかのようだった。


しかし、こうした厳しさがなければ、津田紡績の発展はなかったのかもしれない。

おそらく、行基さんも一ノ瀬さんも、会社ではこうなのだろう。


「承知しました。精いっぱい」


襟を正して返事をすれば、彼は一瞬眉をひそめながらも「はい」と言ってくれた。


とはいえ、パーティになんて出席したことがない私には、これからどんなことが行われて、なにを頑張ればいいのかもわからない。

ますます緊張が高まってきてしまった。
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