明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
たしかに、そうかもしれない。
行基さんは私を逃がそうと暴漢に背を向けた瞬間、切られてしまった。

一ノ瀬さんは私のせいではないと言ってくれたけれど、私がこんな事態を招いてしまったのかもしれない。


「華族さまは危機感がなくて、やはり我々とは違いますね。商売は、一瞬でも気を抜いたら失敗します。常に攻めの姿勢を忘れず、かつ守らなければ」


私には商売のことはよくわからない。
しかし、行基さんが努力をし続けていることだけは伝わってくる。

だから尊敬しているが、華族に危機感がないと指摘されても、どう答えていいのかわからない。

一橋の父は散在した挙句爵位返上の危機にあったとはいえ、それはまったく身から出た錆であり、商売上の危機感とは別の種類のものだ。


「申し訳ありません」


少しもやもやした気持ちはあったものの、私は素直に首を垂れた。

やはり藤原さんは、行基さんのことが大切でたまらないのだと感じたからだ。

私はあたられているのだと。
そして、その気持ちがわからなくはない。
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