明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
利き手の右手を動かせないので仕方がないとはいえ、食事のたびに私に食べさせるよう要求する。

私はお団子を食べさせてもらったとき、照れくさくてたまらなかったのに、彼は平気なのだろうか。


「なにから召し上がりますか?」
「そうだな。魚をいただこう」


手のかかる子供のようだけど、私は彼のお世話ができることがうれしくてたまらない。


「あやも食べなさい」
「私はあとでいただきます」
「ダメだ。一緒に食べなければ味気ないだろう?」


その発言に胸を弾ませていることを気づかれたくない。

行基さんはちっとも食べられない私を気遣ってくれているだけで、他意はないのだから。


行基さんが刺され、私は彼への想いが出会った頃よりずっと強くなっていることを知った。

ただ、お慕いしているという程度ではなく、彼がいなくなってしまったら私はどうなってしまうんだろうかと狂いそうだった。

もう、彼は私の人生の一部に組み込まれている。
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