明治蜜恋ロマン~御曹司は初心な新妻を溺愛する~
でもそれは、残業をさせてしまうこともある一ノ瀬さんを早く家に帰してあげたいという心遣いもあると思う。


そんな彼らが先頭に立ち切り盛りする会社は、行基さんの積極的な先行投資や、練りに練った生産計画などが功を奏し、お義父さまから受け継いだときは三千人ほどだった従業員をあっという間に五千人近くにまでに増やしている。

社長業を引退したお義父さまも、家でのんびりと過ごしながら行基さんの活躍ぶりに目を細めているようだ。


津田家のことを、今やすっかり『成金』などとバカにする人もおらず、政府関係者ですら、輸出で莫大な外貨を得る行基さんになにも言えない状態だ。


爵位が欲しくての政略結婚ではあったけれど、おそらくそんなものは必要なかったと思う。

私は彼とこうして夫婦になれたのだから、政略結婚に感謝しているけれど。


一ノ瀬さんも、今は空席になっている副社長の椅子に座るのが目前らしい。
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