キラキラと光り輝く、優しい笑顔に包まれて
教室の前まで走り、ドアの前で立ち止まる。

重要な事を忘れていた。
中には陽亮もいるし、ここでみんなに相談なんて出来ない。


切れる息を整え、陽亮と顔を合わせてもうろたえたりしないよう気合いを入れる。


陽亮は女馴れしていてデートなんて数知れずしているだろうに、私はというとほぼゼロに近い。ここでうろたえる姿を見せたら恰好悪い。


経験値の差は埋めようがないけれど、陽亮の前では恰好良い女でいたい。


出来るだけいつも通りで、出来るだけいつもより恰好良い私でドアを開ける。開けるとすぐ陽亮が目に入った。

席の位置は最高だけれど、今の私には最高とは言えない。


私が席に座っていないと、1番ドアから近いのは陽亮だ。気合いを入れたつもりがすぐに折れそうになる。


陽亮の微笑みが眩しいのは窓から入る光のせいだけじゃないのは気のせい?

煩い心臓は走ってきたせい?


「座らないの?」


意地悪い微笑みさえ許せてしまい、突っ掛かるのをやめ素直に座った。




「アズサ‼緊急事態‼」


デートに誘われた余韻に浸っていた私にサクラが窓際の席から私を見付け引っ張る。


「でも、もうすぐ授業始まるよ」

「いいからちょっと来て!」
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