キンダーガーテン三   ~それぞれの居場所に~
ブー……ブー……

再び携帯が鳴る。

「………ック……はっ……い…ック……ヒィッ。」

「……………まだ泣いてる。
ねぇ~唯。………………………………頼ってよぅ。
……………オレじゃ………ダメ?
話したくないなら聞かない。
でもせめて……………泣くのはオレの前にして。一人で泣かないで。
一人で泣いてるって思うと………………辛いから………。」

「クッ………ック。………ヒィッ…………ヒック。」

「唯。………玄関開けて。………ちょっとだけでも……顔を見せて。」

もう限界だった。

彩ちゃんのこと。

咲ちゃんのこと。

考えないといけないことは沢山あるのに……

少しでも近くにいたくて………玄関に行くと………

「玄関開けてくれる?」

携帯よりも近く………ドアの向こうから声が聞こえる。

「ヒィッ…………ヒィック………ックック……甘えられない………」

「今だけ……………
園で無理なら……………今だけ。…………ね。」

そんなこと言われて……無視出来ない。

カチャ。

鍵を開けると……先生が入ってきた。

「バカ唯。…………一人で勝手に結論出すな!」

怒る先生の声は優しくて………

抱きしめられたら我慢なんて……無理だった。

「え~ん……」

たった一日なのに……この腕が懐かしい。
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