アスカラール
当日を迎えた。

「お先に失礼しまーす」

美都はオフィスを後にすると、待ちあわせした2階のカフェへと足を向かわせた。

カフェに到着して中を見回すと、カウンターの席でパソコンに向かっている成孔の姿があった。

美都は彼に歩み寄ると、
「成孔さん」
と、声をかけた。

「美都」

成孔は振り向くと、名前を呼んだ。

「お仕事中でしたか?」

そう聞いた美都に成孔はパソコンをチラリと見た後で、
「もう少しでキリがつくから」
と、言った。

「今日は渡したいものがあるだけなので」

そう言った美都に、
「そう言えば、お礼をしたいって言ってたね」

成孔は思い出したと言うように返事をした。

「えっと、これなんですけど…」

美都は手に持っている紙袋を成孔に差し出した。
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