アスカラール
成孔は42階に住んでいた。

(マンションと言うよりも、ホテルだ…)

このような場所に連れてこられたのは初めてなので、美都はどうすればいいのかよくわからなかった。

エレベーターに乗っている間も気持ちが落ち着かなくて仕方がなかった。

部屋の前に到着すると、成孔は手なれたようにカードキーを使ってドアを開けた。

「どうぞ」

成孔はドアを開けて、美都を中へ入るようにとうながした。

「お、お邪魔します…」

美都は何でこのような展開になってしまったのだろうと思いながら、部屋の中へと足を踏み入れた。

入った瞬間、フワリと甘い香りが躰を包み込んだ。

(成孔さんの香水と同じ匂いだ…)

彼がいつも身につけているお菓子のようなあの香りに包まれながら、美都は中に入ったのだった。
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