Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~

橋詰 菜々子(はしづめななこ)二十七歳。

私は珍しく今日は一人、半地下にあるBAR Plume で呑んでいた。
飲むと言ってもほんの二杯ほどのカクテル。


ヤケ酒なんて思っても、基本警戒心の強い私は一人で外でそんなに呑まない。
それでも飲みに来たのはどうしても美味しいお酒を飲んで紛らわせたかったからにほかならない…
それでも、今日はこの二杯目を飲み終わったら帰るつもりだ。


そうして静かに二杯目を味わっていた私の左隣に、スっとやってきた人。

チラッと見ればかなりの美形と分かる。
隣に座った姿はスマート、髪型もスッキリと纏まり細身のスーツも綺麗に着こなす。
顔も細長い切れ長の目に綺麗な鼻梁、少し薄目の唇。
何より、その目と雰囲気から色気がダダ漏れのイケメンである。

『君子危うきに近寄らず、ここは即撤退』


このイケメン程整っちゃいないけれど、私も私自身をそこそこ理解している。
そう、私の外見は現在手が届きそうな綺麗めお姉さんである。

黒のタイトなノースリーブワンピース。
シルバーのピンヒール、シルバーのミニバック。
口紅は桜色のピンクルージュにグロスをオン。
身長165センチに7センチのヒールで170を超えた私には早々寄ってくる男は居ない。


しかし、今隣に来たこのレベルの男なら違う。
身長は目測で180超えの色気溢れるイケメンには、私の身長も大したことではない。
むしろ、イケると踏んでやってくる。
そこそこの年齢の私は、そこら辺の経験値も積んでいる。
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