Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~

そうして釘を刺されつつ協力者を得た俺は人事部にも掛け合い、四月一日付けで彼女の秘書課への異動を承認させた。
かなりの力技を使った。


そして、今日この日。
秘書課への異動を目前にした週末。
彼女が秘書たる装いのためスーツを新調すると聞き、その買い物に付き合うのを沖さんから譲ってもらった。


数ヶ月ぶりのまともな対面。

彼女はどう動くだろう。
多分上司と部下を強調するだろう…


予測通り、彼女は俺を役職で呼びキッパリと距離を置く。
目の前に居るのに、心の距離は見事に遠い。

俺は自分にある物を最大限に活かすしか戦法がない。
言葉通り、なりふり構わず彼女にストレートにぶつかっていくも、サラッと流されてしまう。

それでも、俺には態度と言葉で示し続けるしか道はない。
長期戦も覚悟で望んでいた。


物にも、地位にも、見た目にも反応がない相手を振り向かせるにはひたすら真っ直ぐ誠実であるしかないのだ。

幸い、明後日からの日々は仕事で毎日顔を合わせる事になる。


俺は、とにかく彼女の近くに居られてコミュニケーションの取れる位置に入った事だけを確認して、その日は紳士に自宅へと送り届けたのだった。

< 26 / 64 >

この作品をシェア

pagetop