Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~

「よし、コレとコレにする!あと、練習用にウェアも見たいな」

そうして今度はウェアコーナへ。

「菜々子、これとこっちならどっちが良いかな?」

差し出されたのは黒に赤のTシャツと濃い青に黄色が入ったTシャツ。

「専務には青の方が似合ってますよ」

「そうか、じゃあ菜々子が選んでくれたこっちにしよう。ねぇ、そろそろこれがデートだって気づいてるでしょ?俺が菜々子って呼んでるんだから、専務って辞めない?会社じゃないんだし」

あー、とうとうそこを突っ込んでくる?
いつ言われるかなとは思ってたけれど。

「じゃあ、清水さんで」

ケロッと返すと、ムッと眉間にシワを寄せる専務。
なに、本当にこの人表情豊かだな。
ちょっと可愛いとか思ってしまったじゃないか…。

「下の名前がいい…。呼んでよ、啓輔って…」

今度は捨てられた毛並みの良い大型犬が凹んでるみたいに見える…。

歳上で、社会的地位もあるいい大人だけどこれだけコロコロ表情豊かにされるともう我慢も限界だった。

「ふふ、ごめんなさい。啓輔さんで良いでしょう?」

そう呼べば、パァーっと明るい顔をしてニコニコと笑う。

会社ではなかなか見ない顔だなと思いながらも、私は多分もうこの時には絆されてきてたんだろう。
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