Black Cherry ~にゃんこな彼女は一筋縄では捕まらない~
啓輔さんに捕まってから1ヶ月と少し。
季節は梅雨に入り、7月は七夕を迎えていた。
「梅雨の中休み。今年は織姫は彦星に会えそうね」
真夏のようなギラギラの日差しが射す今日は間違いなく良く天の川が見れることだろう。
都会だと難しいが…
専務室から見上げた都会の空を眺めつつの独り言。
現在専務の啓輔さんと第1秘書の三笠さんは役員会議に出席中。
私はその間に専務のデスクの書類整理をして、午後からの決済書類を優先順位に並べていた。
そんな時、予想外にバーンと開く専務室の扉。
驚いて振り返れば、珍しくかなりご立腹な顔を隠さない専務。
その後を慌てて追ってきた三笠さん。
何事だ?
思わず私も眉をしかめてしまう。
「菜々子、ごめん。コーヒー入れてくれる?」
私を見て少し落ち着いたのか、眉を下げつつ頼まれた。
「はい、かしこまりました」
そう答えて私は給湯室へと向かう。
あの雰囲気、私は聞かない方がいい話だ。
私はゆっくり豆をミルで丁寧に挽き、じっくりとコーヒーを入れたのだった。