身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 俺は浮かんだ想像を振り払うように、チャールズを叱咤した。しかしこれは同時に、俺自身への叱咤でもある。

 あらぬ想像に身を焼くよりも、今出来る事に尽力するのだ!

「申し訳ございません。詮無い事を申しました」

 チャールズはハッと驚いた様子で顔を上げ、すぐに表情を引き締めた。

 今するべきこと。これまで将軍として培ってきた経験から、最善の手段を導き出す。

「……この時間から目撃者を見つける事は難しいだろう。目撃者捜しにあてた人員を減らし、王都近辺の宿屋を端からあたらせる。同時に裏通りの深夜営業の飲食店全てに人の手を入れる。俺が直接指揮を執る。チャールズは屋敷で待機し、明朝と共に侍女らを組ませ、もう一度屋敷周辺の捜索を頼む」
「かしこまりました!」

 チャールズへ指示を残し、逸ぐ心のまま降りたばかりの愛馬に、再び飛び乗った。






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