身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい



 アボットの読みは見事に当たった。医師と助手に扮し、診療目的での登城を伝えれば、王宮への入城は容易だった。

「奥殿にて高貴なお方の診療にあたるよう、王宮より遣いがあって参じている」

 これでここまで、難無く辿り着いていた。

「……医師を手配したというような情報は下りてきておりません」

 しかし順調に奥殿へ続く扉の前まで来たところで、俺とアボットは勤務に忠実な近衛兵によって足止めを食らっていた。

「奥殿の責任者に確認をしてまいりますので、少々お待ちいただけますか?」
「早急に参れとの依頼であった。故にここで其方らと押し問答する間すら惜しい。この間に患者の容態が悪化したらなんとする」

 内心の焦りをひた隠し、毅然とした態度を崩さずに言い募る。


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