身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい


 ……もう、いやだ。もう、消えちゃいたい。ここじゃない、どこかに行きたい。

 感傷に突き動かされ、衝動的に願った。

 まさかそれが愛する家族との今生の別れになるなんて、露程にも思わなかった。

 ただ、稀に見えた流れ星に、苦しい現状を嘆いただけ。

 願いを終えても、流れ星はまだ燃え尽きていなかった。
 けれどこれ以上、その美しさを直視するのが辛くって、そっと瞼を閉じた。

『よいぞ!』

 え!? 

 最初に聞いたのは声。次いで、閉ざしたはずの視界に突如、妖艶に微笑む女性が浮かぶ。

 不思議な事に、顔の造作だけを見れば、女性と私は瓜二つだった。だけど見る者に与える印象が、まるで違う。
 女性は圧倒的な存在感で、艶然とそこにいた。

『わらわは星の女神。ちょうど眠るのに厭きて目覚めたところじゃ。わらわが其方の望みを、叶えてやろう。わらわはここ、ランドーラの王にむかっ腹立っておるんじゃ! じゃから丁度良いわ!』

 慌てて瞼を開いても、白銀に発光する女性の虚像は消えなかった。

「えっ、あの」
『わらわと交換を、しようではないか!?』

 どころか星の女神と名乗った女性は私を置き去りに、好き勝手に捲し立てた。

『では、達者でな!』
「え!? 待っ、やっ!? い、いやぁぁぁぁあああああっっ!!」

 取り付く島もなかった。

 次の瞬間には、私は圧倒的な光の渦に呑み込まれていた。


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