独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「ほら、パウルス。着替えをするから出て行って」
「はぁい。控室の方にいるよ。終わったら呼んで」

 いくらいとこといえど、着替えの場にまで同席されるのは困る。彼を控室の方に追いやっておいて、フィリーネは支度を始めた。
 ヘンリッカは、フィリーネがドレスを着るのを手伝い、それから髪をきちんと結ってくれる。
 アーベルから届けられた白い花を結った髪に挿して完成だ。

「すごく、綺麗……何かあったの?」
「何かって?」

「私にはわからないわ。なんだか、最近、フィリーネ様急に綺麗になったみたい。だからアーベル様もお花をくださったんでしょうか」
「な、なに言ってるのよっ!」

 不意にアーベルの名を口に出されて、不覚にも動揺した。彼のことなんて、気にしていないのに。

 彼には感謝している。彼の隣にいることで、こうやって販路を広げる伝手を見つけることができた。
 これから先うまくいくかいかないかはフィリーネの手腕にかかっているわけで……どこまでできるか自信はないけれど。

「だって、最近のフィリーネ様、ちょっと変なんだもの。そわそわしていたり、ふわふわしていたり」
「……それは」
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