独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「クラインの店以外に卸す予定はないの?」
「ええ。彼のお店と独占契約を結んでいるので」
「……まあ」

 フィリーネの言葉に、集まった令嬢達がざわっとする。
 まさか、ここまで販売促進活動がうまくいくとは思っていなかった。

「それなら、私、クラインの店にドレスを注文するしかないわね」

「あら、彼の腕はとてもいいわよ。私、この間散歩用のドレスを注文したけれど、三乙女のレースは品切れだったので使えなかったの。残念だけど、レースがなくても、彼のドレスは素晴らしいわよ。注文する価値はあるわ」

「それなら、私は舞踏会用のドレスを——大変、こんなことをしている場合ではなかったわ」

 不意に気づいたように、令嬢の一人が立ち上がる。

「早く注文しないと、出来上がりが半年先とかになってしまうかも。この国に滞在している間に届かないのでは意味がないわ!」
「言われてみればそうね!」

「ごめんなさいね、フィリーネ様。私達、ちょっと出かけてまいりますわ!」
「え、ええ……行ってらっしゃい……?」
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