独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 彼女達は、フィリーネを残してばたばたと行ってしまう。その場に一人取り残されたフィリーネは、呆然と彼女達を見送った。

(想定以上だわ、本当に……)

 アーベルの協力を得ることができて、実際に、クラインの店には依頼が殺到しているわけで。本当に彼の協力を取り付けることができてよかった。
 

「……お前の方はうまくやってるみたいだな」
「アーベル様」

 先ほどフィリーネの名を呼んでいたアーベルがひょっこりと姿を見せる。フィリーネがここにいるのに気づいていて、あえて距離をあけてくれたのかもしれない。

「おかげさまで。クラインの店には注文が殺到しているのではないかと思います。アーベル様の方はどうですか?」
「俺の方は、あまり虫よけの効果はなさそうだ。特にライラとかはどこに行っても目ざとく俺を見つけて近づいてくる」
「ライラ様は、最有力候補でしょうに。何か、ご不満でも?」

 頭の中で、アーベルとライラを並べてみる。二人ともすらりと背が高いし、整った容姿の持ち主だ。
< 140 / 267 >

この作品をシェア

pagetop