独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 クラインから届けられたドレスを着た彼女は、頬を真っ赤に染めていた。たしかに、目立つような美人ではないけれど——最近、ものすごく好ましく見えてきたから、困る。

「ほら、腕をよこせ」
「腕、ですか?」
「いちゃいちゃするんだろ?」
「しませんよっ!」

 先ほど、アーベルに『全力でいちゃいちゃいしましょう!』と言って彼を引っ張り出してきたのを、フィリーネは忘れてしまっっているらしい。
 からかえば、また頬に血がのぼったみたいだった。フィリーネの耳に唇を寄せて、「け・い・や・く——だろ?」とささやいてやる。
 うぅとかなんとか唸っていたみたいだったけれど、しぶしぶアーベルの腕にフィリーネは自分の腕を絡めてきた。

「そうよ、契約、契約なんだから……」

 本人は声に出していないつもりなのだろうが、心の声はしっかりと言葉になっていてアーベルの耳に届いているのもフィリーネ本人は気づいていないみたいだ。
 野外劇の上演される場所に来てみれば、そこには令嬢達や各国のお偉方など多数の人が集まっていた。
 アーベルの登場に、彼らの視線が突き刺さる。王族用に用意されている場所にアーベルがフィリーネを連れていくと、集まった人達がざわざわとした。
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