独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 だが、これでもアーベルを迎えるのに、精いっぱいの準備はした。こちらとしては最高のおもてなしの準備をしていたわけで、何一つ恥じるべきところはない。

 そんな話をしている間に、連絡を受けたフィリーネの両親がアーベルに会いにやってきた。この場で改めてお礼を言おうということなのだろう。

「アーベル王子、この度は娘をすくってくださって感謝した」
「こちらの手が回らず、申し訳なかった」

 アーベルが、素直に頭を下げている。しかもフィリーネのために!

「やや、それってアーベル様が頭を下げるところじゃないですよね? 私、たまたま馬車の中にいただけだしっ!」

 慌ててばたばたと手をふるフィリーネに、アーベルはもう一度頭を下げた。

「それでも、だ。客人を守れなかったというのは、我が国の非となる」
「そこまでにしてください。娘も無事に戻りましたし、我々としてもこれ以上言うことはありません」
「そんなことより、クラインの店を紹介してくださってありがとうございました」

 頭を下げ続けるアーベルをなだめてくれた両親は、城内を案内すると言って、アーベルを連れ出した。
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