独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「母上の一押しの相手ではあるが、お前の国に嫌がらせしてたんだぞ。それに、デルガド王国のせいで産業をつぶされた小さな国はたくさんあるからな。そんなの王太子妃にしたら、あとあと問題を引き起こすかもしれないじゃないか」

 デルガド王国が、ユリスタロ王国以外の産業も潰しにかかっていたのは知らなかった。やはり、アーベルにはかなわないらしい。

「ああ、それと。お前の両親に話がある。今から会えるか?」

 アルドノア王国に行ってからのフィリーネの生活態度がいまいち悪いとか、そういう話だったらどうしよう。

 フィリーネはそんな不安を抱きながら、まずはアーベルを応接間に案内する。

 謁見のための間よりも私的な応接室の方がいいかと思ってのことだったけれど、ヤグルマソウの間と比較したら、あまりにも質素で申し訳ないくらいだった。けれど、アーベルは意外にもこの部屋が気に入ったみたいだった。

「この部屋、何かいいな。お前が温かい環境で育ってきたというのがよくわかる気がする」
「……本当ですか? アーベル様から見たら質素すぎませんか?」

「質素すぎるなんてことはない。」
「それならよかったです」
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