独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
 なりたかったのかって——そんな風に面と向かって問われると困る。女王になりたいかなりたくないかというより前に、フィリーネは、女王になるものと決められていたはず。生まれた時から他の道があるなんて考えたことは一度もなかった。

「女王だからって、ここに住んでなきゃならないって決まりもないし、私はいいと思うがなぁ」
「そうそう。帰ってこようと思えば、いつでも帰ってこられるわけだし」

 父の言葉に、母が同意する。この人達、ずいぶんのんきなのでは? そう口から出かけた言葉を呑み込み、吐き出そうとして、また呑み込む。

「ユリスタロ女王が、アルドノア王妃になったら、問題あるかしら? だったら、王位はパウルスにあげちゃえば? あなたがそんなに王座に固執してるとも思えないし、パウルスならいい王様になると思うのよ」
「ちょっとお母様!」

 再びフィリーネの口から悲鳴じみた声が上がる。
 母の提案もものすごい。あげちゃえばって王位って、そんなに簡単に譲ってしまっていいものだったのだろうか。
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