独占欲強めの王太子殿下に、手懐けられました わたし、偽花嫁だったはずですが!
「……なかなか、うまくいかないなって思ってたんですよね。私の想像だと、そろそろレースを買いたいって話がきてもいいはずなんですけど」

 ヘンリッカやパウルス達も懸命にフィリーネのドレスを誉めてくれているけれど、レースについてたずねてきた令嬢はまだいなかった。
(アーベル様の隣にずっといるのが間違いじゃないかって気がするのよねぇ……)
 よく考えたら、アーベルは各国から集まっている有力者達と会談を行っている時と、令嬢達の相手をしている時以外は、フィリーネの側にいることも多い。
 もうちょっと、一人でいる時間を増やしたら、誰かがフィリーネのドレスについて話を聞きにきたりするのではないだろうか。
 アーベルが選ぶのは、国のために、一番利益をもたらしてくれる女性だという話だった。今は、家臣達がアーベルの条件に合う人を懸命に選んでいるところらしい。順当に候補者の選定も始まっているそうだ。
(……それにひきかえ、私ときたら)
 祖父の代からの悲願であるレースの売り込みに来たというのに、まだ、何一つ結果を出すことができていない。
 本当に、このままでいいのかという気もしてくる。
< 87 / 267 >

この作品をシェア

pagetop