記憶のかけら
ヘッドライト
地響きとともに

眩しい光が

集落を目指して迫ってくる。



見張りがこれでもかと早鐘を打ち鳴らす。



男も女も戦が始まったと思った。



山狩りは中止だ!

みな持ち場につけ!

怒号が飛び交う。



不思議な音を立て、

誰もが

見たことも聞いたこともない、

真っ白の四角い箱が近づいてきた。

みな度肝を抜かれていた。



眩しい光とともに、

猛スピードで走ってきた箱が、目の前で急停止した。



誰もが動かなかった。

いや、動けなかった。



突然光が消え、

箱の中から、

片袖のない着物姿の女が出てきた。



「真由美さま!」

「真由美殿…」



真由美たちの捜索準備をしていたのに、

本人が箱から出てきた!

しかも、片袖だけで。

困惑と動揺が拡がっていく。



車を降りた真由美が、助手席のドアを開けると、

怪我をし、牽引用ロープで縛られた西宮。



「西宮さまが縛られている!?」

どよめきがより大きくなった。



「落ち着いて。私が縛ったんです。」と真由美。



落ち着くどころか、村人はパニック状態だ。



真由美は努めて、わかりやすく話した。



「西宮さんは止血して、

出血がひどくならないように、縛りました。

急いで手当てをしてください。」



静止画が急に動き出したようだ。



大変だ!

西宮さまが怪我をされている。

奥へお連れしろ!



真由美は続けた。

「敵は有馬の裏山に集結しているようです

港町を襲撃すると聞きました。

早馬でお舘さま達に伝えてください。」



早馬で知らせろ!

早く、はやく!



さらに真由美は

「私が乗ってきたのは自動車です。

勝手には動かないので、心配しないでください。」



ポイントだけ説明し、電子キーで施錠した。



ピッ!



みんなが一斉に後ずさりする。



説明している時間はない。

集落の中へ、屋敷の中へ、

真由美は走っていった。

< 29 / 53 >

この作品をシェア

pagetop