記憶のかけら
戸惑い
空が白み始めた。

明け方近くまで、みんなで作戦を練っていた。

いまは裏山の偵察に行った見張りが戻るまで、

束の間の休息をとっている。

西宮さんは奥座敷で眠っている。



小雨が静かに降り出した。

そろそろ梅雨の季節がやってくる。

真由美はぼんやり考えていた。



雨のせいで集落が静かだからか、

戦の前で神経がとがっているためか、

音に敏感でよく聞こえる気がする。



遠くから馬のいななきと

人が往来する音と声が

だんだん大きくなって聞こえてきた。

裏山の見張りが戻ったのかも?と見に行く。



周囲の集落から援軍に来たようだ。

屋敷には続々と人が集まってきていた。

お舘さまは準備が整い次第、こちらに来るらしい。



先遣隊を差し向けたんだ。

そう思った。



人ごみの中に、御影さんを見つける。



「真由美殿、ご無事で何よりでした!」と御影さん。

いつものポーカーフェイスと硬い口調ではなく、

全身から人情味を染しみ出して、、

無事を喜んでくれている。

ありがとう!!!



御影さんの話から、港の様子が分かってきた。



空が赤く染まったのは、

やはり火を放たれ、数件の民家が燃えたから。

水路の水が豊富に流されていた為、

大規模火災にはならなかったらしい。

火を放った曲者達は直ぐ捕らえられ、

作戦は早い段階で櫻正宗側にバレて、身元が割れていた。

やはり、

山深い領地を治める豪族、春日の手の者だった。

有馬の山を越えたところに集結して、

櫻正宗を襲う計画だった。

警備を甘く見たようだ。



領主、春日光成は若いながらも、

周辺諸国を侵略することで領土を拡大し、

近年力をつけてきた豪族のひとつらしい。



また、光成は、

繰り返されるお家騒動で、

猜疑心の強い残酷な男として、

その名を轟かせていた。



御影さんの話によると、

お舘さまは私をとても心配して、

先に御影さんを寄越したらしい。



「えっ、、、そうなの?」

なんか嬉しいような、こそばゆい気分。

とても心配してた?

でも、

自分の領地で、それも近くにいて、

よそ者に攫われたなら、

残虐で知られる者に攫われたとわかったら、

そりゃ、

誰でも心配するわねと思いながらも、

ドキドキ胸きゅん、

久しぶりの感情に、

一人とまどう。



いい歳して、免疫なさすぎ…



この世界に来て、

最初に助けてくれて、

親切だっただけの人だし。

何か言われたわけでもないのに、ね。

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