艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
今日は会食だと聞いていたけど、小腹が空いたら何か食べるだろうかと思ってリンゴのコンポートを作ってあった。ほんのりと温かいそれは、胃腸にも優しい。
スーツの上着を脱いで、ネクタイを少し緩めた彼はリンゴをひとくち掬って口に入れる。
ついじっと彼の表情の変化を窺って、気付いた彼がにこりと笑う。


「美味しいよ」


ほっとして、私もとなりでひとくち含んだ。


「で……さっきの、お父さんの話だけど」

「あ、はい。一度はぶつからないといけないことですし」

「今度、一緒に行こうか」

「えっ? いえいえそれはまずいですって」


さらっというけれど、あの父が簡単に許すはずはないのだ。葛城さんが行けば火に油というやつで、まず私が話をしてから……って結局いつものように喧嘩になるのがオチだけれど。
だけど葛城さんは不思議そうに私を見る。


「何が。大事な娘さんをくださいって説得するのは男の役目だよ」

「いやそれは、そうかも、ですが……」


そのセリフに、かあと顔が熱くなる。いや、照れている場合ではないのだけど。

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