艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

親指がすっと、私の頬を撫でる。
意味が解らず答えに困っていると、彼がぽんと私の頭に手を置いた。


「不安があるならちゃんと言って。ひとつひとつ潰していこう」


そう言われたけれど、やっぱりよくわからない。自分が何か、葛城さんと出会う前には知らなかった感情に浸食されているのはわかっている。それが不安によるものなのかわからないが、一番似ていると思ったのは『寂しい』という感情だった。


ただ、何が寂しいのかわからない。不安なのだとしたら、確かに色々あるけれど。


「そろそろ、父とちゃんと話そうと思うんですけど」


父との関係、花月庵のこと。
不安が理由なのだとしたら、一番の心配事はそれしかない。



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