艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「何言ってるのよ、藍ちゃん。カツラギって言ったらお菓子屋さんじゃないの。確か、芦屋に本店がある……ほら」

「え……」


それを聞くまで、全く、私の中で結びつかなかった。意外過ぎて、思いつきもしなかったのだ。


「えっ!? パティスリーカツラギ!? 本当に?」


パティスリーカツラギ。全国の各地に店舗を広げ、手土産や贈り物の定番として若い子に人気が高い。創業は二十年かそこらだろうか、歴史は浅いが、今や老舗店を凌いで洋菓子界のトップに名を連ねている。
そう、洋菓子界の。


「洋菓子屋がなんでうちに縁談持ち込むの!?」

「あら。藍ちゃん、結婚するの?」


きょとん、と祖母は呑気なものだ。
花月庵の味と顧客が欲しい……とあの人は言ったけど。そんなもの、カツラギに必要なものなのだろうか。

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