艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「私が嬉しそうに作るから、言えなかったんですよね? でもそれはっ」
それでは私は、好きな人に毎日苦手なものを強要していたことになってしまうじゃないか。
思い出すと、恥ずかしくて申し訳なくて。
じわ、と涙の浮かんだ私を見て、彼は慌てて言い訳をした。
「違う、そうじゃなくて」
「何が違うんですか」
「俺が食べたら、嬉しそうに笑うから。そのあと君も幸せそうにひとくち食べる。それが好きだから、本当に食べたくて食べてたんだけど……」
「同じ意味じゃないですか」
「いや違うって。我慢して食べてたんじゃなくて、あの顔が見たいから食べたっていうか」
必死に言い訳をするけれど、私にはやっぱり同じ意味にしか聞こえないのだが。
おろおろしながら彼は私の両肩に手を置き、心底、弱った顔をした。