艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
スマホの液晶画面の中央に、メッセージの着信が表示されていた。
時間は深夜零時過ぎ。心配をかけたからか、みんなして励ますような内容のメッセージを送ってきてくれていた。
『ごめんね、心配かけて。やっぱり単なるマタニティブルーだったのかも』
入力して送信する。
そのあとで気が付いた。文面が過去形になっている。けれど確かに、心の奥にあった不安や寂しさに似た靄は消しとんで、今は穏やかに凪いでいる。ほんのりと、心が温かい気すらした。
と、数秒の間をおいて返信がふたつ、吹き出しで上がってくる。
『解決したなら良かった。旦那さんと話したのかな?』
『慰めてもらったんでしょ。現金なやつ~』
「うっ……」
鋭い指摘にびっくりだ。
答えなんてなさそうな問題があっさり片付く背景を、どうやら推測されてしまったようだ。
慰め、といえば慰めなのか。
抱かれてぴったりくっついているだけで、幸せを感じているのだから確かに現金なのかもしれない。
難しいことなんか必要なかった。
ようは、ふれあいが足りなかったということか。