Jewels
再び、気まずい沈黙がふたりを包む。

もう石を見るには充分の時間のはずだ。金剛は何をしているのだろう?

琥珀はたまりかねて、金剛の様子を見に奥の部屋へ入った。

が、焦った様子ですぐに戻ってきた。

琥珀の様子に瞬時に気付いた紅玉が、鋭く尋ねる。


「どうかなさったの?」

「あの、紅玉様。」


琥珀はどうしていいのかわからず、目が泳いでいる。


「金剛様に何か?」

「非常に申し上げにくいことなのですが。」

「何?早く言いなさい。」


琥珀は意を決したように白状した。


「金剛のやつ、いませんでした。」

「…どういうこと?」

「たぶん、窓から出たんです。俺がいつもやっているみたいに。」

「…どうして?」


紅玉の問いかけは自分に対するものだった。

自分との逢瀬の時間に、他の男を残して金剛が消えてしまったこと、それが何を意味するのか。

ショックを隠しきれない様子の紅玉に、琥珀は懸命にフォローする。


「あの、あいつ気分屋だから、石を見て急に何か思い出したのかもしれません。いてもたってもいられなくなって採掘場に来るとか、しょっちゅうあるし…」

「黙って。」


紅玉の気迫に、琥珀は言葉を失う。


「下手な慰めは無用です。金剛様はわたくしと会うのが嫌で逃げ出した、そういうことでしょう。」


紅玉は琥珀を拒否するように背を向け、姫らしく凛と背筋を正す。
自らの芯の強さを主張するように。

しかし、琥珀の目には痛々しく映るだけだった。


「そんな…」

「いいえ。今までにも無かったわけじゃないの、こういうこと。」

「え?」


紅玉の声が小さく震えている。
背けたままの紅玉の眼に、涙がたまりはじめているのが判った。

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