Jewels
「金剛様の石職人としての腕は、かなりのものですよ。」
「………悔しいわ。」
「え?」
琥珀はやっと、顔を背けたままの紅玉の表情が、悔しそうにくもっていることに気付く。
「わたくし、石職人としての金剛様のことはほとんど知らないの。王子としての、婚約者としての金剛様のことしか知らないのよ。」
紅玉は独り言のようにつぶやいていたが、琥珀を一目だけちらりと見ると、すぐに目を伏せ、自嘲気味に微笑んだ。
「…貴方の方が、わたくしよりも金剛様のことをよく知っているみたいね。」
琥珀はなんとか紅玉の機嫌を直そうと、努めて明るく話しかける。
「何か、作ってもらったことは無いんですか?」
「無いわ。金剛様がわたくしに下さる贈り物は、どこか別の職人が作ったものばかり。」
紅玉は再び琥珀と目を合わせようとはせず、うつむきながら言葉を返す。
「それなら今度何か作ってもらうと良いですよ。」
「作って下さるかしら?」
やっと、紅玉の顔が琥珀の方を向いた。
琥珀の手前、表情を崩さないようにはしているが、寂しげな目をしていた。
「ええ、きっと。」
琥珀は、半ば願うように、紅玉の言葉を肯定する。
「有難う、頼んでみるわ。」
紅玉は、ささやかに微笑んだ。
それだけで、琥珀の胸には、花が咲いたようだった。
「………悔しいわ。」
「え?」
琥珀はやっと、顔を背けたままの紅玉の表情が、悔しそうにくもっていることに気付く。
「わたくし、石職人としての金剛様のことはほとんど知らないの。王子としての、婚約者としての金剛様のことしか知らないのよ。」
紅玉は独り言のようにつぶやいていたが、琥珀を一目だけちらりと見ると、すぐに目を伏せ、自嘲気味に微笑んだ。
「…貴方の方が、わたくしよりも金剛様のことをよく知っているみたいね。」
琥珀はなんとか紅玉の機嫌を直そうと、努めて明るく話しかける。
「何か、作ってもらったことは無いんですか?」
「無いわ。金剛様がわたくしに下さる贈り物は、どこか別の職人が作ったものばかり。」
紅玉は再び琥珀と目を合わせようとはせず、うつむきながら言葉を返す。
「それなら今度何か作ってもらうと良いですよ。」
「作って下さるかしら?」
やっと、紅玉の顔が琥珀の方を向いた。
琥珀の手前、表情を崩さないようにはしているが、寂しげな目をしていた。
「ええ、きっと。」
琥珀は、半ば願うように、紅玉の言葉を肯定する。
「有難う、頼んでみるわ。」
紅玉は、ささやかに微笑んだ。
それだけで、琥珀の胸には、花が咲いたようだった。