Jewels
「さて、とりあえず出てきてしまったが…採掘場でも行くか。」


金剛はのびをする。
大きな肢体が更に大きく伸びる。


「それよりも、遠乗りをしません?もう夕方だから、綺麗な夕焼けや星空が見えるんじゃないかしら。」


翠玉はここぞとばかりに金剛の腕に絡みつき、甘えるように金剛の瞳を見上げた。


「うーん、そうだなー、今からか…。」

「私1人ではこんな時間からは行けませんし、せっかく2人なのだから。」

「そうだなぁ…」


金剛にとっては、夕焼けや星空などよりも、採掘場の方が魅力的らしい。

翠玉はひとつ策を練ってこう言った。


「綺麗なものを見れば、新しい作品のインスピレーションが生まれてくるかもしれませんよ?」

「そうか、それはそうかもな。たまには遠乗りも良いか…。」

「いつも暗くて空気の悪い部屋に閉じこもって、健康にも良くないですよ、行きましょう?見晴らしの良い高台まで。」


そう行って翠玉は強引に金剛を引っ張ってゆく。

この強引さが、翠玉らしいところだ。
機転が利いて、強気なところは姉紅玉にそっくりだが、天真爛漫さがそれを許しているところが翠玉らしいのだ。

翠玉の我侭は、金剛も多少のことは許してしまう。
小さな頃からそうだった。
本当に、妹のように思って可愛がってきたのだ。





だから金剛は気付かなかったのだ。
翠玉の想いが、ただの兄への慕情とは違ってきていることに。


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