Jewels
金剛が辿り着いた場所は神殿だった。

翠玉は高鳴る胸を抑えつつ、必死で見つからぬよう後をつける。

人気が無い。
金剛の足音だけが響いている。
翠玉は息を殺し、足音をさせないように動く。

金剛は人がいないのをいいことに、どんどんと神殿の奥へ入ってゆく。

しばらく回廊を歩いて、少し大きな部屋に着いたところで、冷たい声が響いた。


「ここで何をしているのですか?」


藍色の髪の巫女だった。

金剛はあまりの幸運に感謝する。

動揺を悟られないように、努めて普通の口調で話す。


「人を探している。」

「誰を探しているのですか?」

「…ある女性を。」

「困りましたね、ここには女性しかいません。名前は?」

「名前はまだ、知らないんだ。」

「名前も知らないのに探している?」


金剛はうなづく。
巫女は不可解な表情で問い返す。


「何故ですか?」

「名前を知らなかったら、探してはいけない?」

「そんなことは無いと思いますけど…」


金剛は、状況を楽しんでいるかのようだった。

翠玉は、物陰で声も出せずにいた。
予感していた通りだ。



金剛は彼女に会いにきたのだ。

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