Jewels
翠玉の不可解な行動が気になって、紅玉は金剛のことが心配になった。

翠玉が何か企んでいるのか、それとも本当に金剛に何かが起こっているのか、それは判らない。
しかし、まずは金剛に会ってみないことには何も確かめようがない。


その日のうちに白銀を呼び、金剛に会いたいと伝えた。

白銀は事態を理解しておらず、顔をしわくちゃにして微笑む。


「紅玉様からお会いになりたい、というのはめずらしいですね。」

「会って頂けるかしら?」

「ええ、もちろんですとも、金剛様もきっとお喜びになることでしょう。」

「だと良いのだけれど。」


紅玉は少し顔を曇らせる。
白金の前では素直に表情に出てしまう。

しかし、白金は紅玉の不安の真の理由には気付かない。


「紅玉様も、遠慮なさらず今回のように積極的にお約束をとりつければよいのですよ。お二人はお互いに遠慮しすぎているように感じますよ。」

「…そうなのかしら。」

「ええ、そうですとも。」

「…ねぇ、白銀?」

「なんでございましょう?」

「金剛様は石細工がお得意でしょう?例えば…わたくしのために細工物を作って欲しいと頼んだら、作って下さったりするのかしら。」

「大丈夫でございますよ。紅玉様、金剛様は多少気難しく、我侭なところはおありですが、お優しい方でございます。そんなに怖がって遠慮することはございませんよ。」

「…そう、そうね、わかった。」


紅玉が面と向かって他人に不安を口にするのは珍しい。
幼い頃から世話をしてきた、白銀の前でくらいだろう。

不安げにうなづく紅玉に、白銀は優しく微笑んだ。


「では、すぐに黄金に打診いたしましょう。紅玉様、明日のお召し物でもお考えになっては?」


紅玉はわずかに微笑むと、部屋へと去っていった。

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