借金取りに捕らわれて 2
良かった。と私は内心胸を撫で下ろした。


誤解が解けなければ最悪、厨房に戻れないばかりか、私の身さえ危ないところだった。


そんな安堵している私に、秋庭さんが真面目な顔で口を開く。


「なあ、ヒロ、そろそろ名前で呼んでくれてもいいんじゃないか?」


うっ…いつかは言われると思ってた…

だって、ずっと秋庭さん下の名前で呼ばれたそうだったし…

それを分かっていながらしないのは、単に私が恥ずかしいからで…

言い慣れてしまえば良いだけの話なのは分かっている。

けど、どうしてか、秋庭さんを名前で呼ぶとなると、その一回一回が耐えがたい程に恥ずかしい。

言い慣れる前に、私が恥ずかしさでどうにかなってしまう…


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