ハツコイ
「じゃあな、柚。」
頭に手をポンと置いた琉偉が、先にエレベーターを降りて行った。
朝、たまたまマンションの下で琉偉と一緒になって、出勤してきたのだけれど…
なんだかすごくドキドキする。
あの頃よりも当然琉偉は大人になってて、スキンシップとかごく自然で…
キスだって…
「おはようございます、倉科さん。」
「ひゃあっっ!!…あ、あーみ……志賀さん…」
ビックリした。
朝からキスのことなんて考えて、私のバカバカ!!
相変わらず会社ではクールなあーみんこと志賀さん。
サッと私を追い抜かし、オフィスに向かってずんずんと歩いていく。
その背中に向かって、声をかけた。
「あの、志賀さん!よろしければ今日、お昼ご一緒させていただけませんか。」
志賀さんがくるりとこっちを向く。
「ええ、もちろん。」
ニコリともせずに放たれた言葉だったけど…
ちょっと、あーみんの面影が感じられた気がした。