ハツコイ
夜帰宅すると、琉偉の部屋はまだ真っ暗だった。




まだ、残業してるのかな。




隣のオフィスなんだから、残業してるかどうかくらいチラッと覗けばわかること…なんだけど。




覗けない理由があるんだよね…





「どうしよ…安原さん…」




そう。




安原さんへの返事を待ってもらってる間に、琉偉と付き合いはじめてしまった。




こんなことなら、あの時すぐお断りすればよかったのに…




「私、最低だな…」




あんな素敵な人を傷つけるんだ、私。




でも…ちゃんと言わなきゃ。





そう心に誓い、部屋着に着替えた。








数時間後。





隣の部屋、つまり琉偉が帰ってきたであろう物音で、自分がうたた寝をしていたことに気づいた。



そしてスマホに着信が。



「もしもし。」




『柚?ただいま。』




「おかえりなさい、琉偉。」




電話口で、ふふっと二人で笑い合う。





おかえり、ただいまって言えるこの感じ。




すごく、幸せな時間。


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