初恋の行き先
初恋の行き先
「ちょっと航也、遅いよ」


月曜日の夜九時。
仕事を終えて、待ち合わせ場所である居酒屋へ向かうと既に頬を真っ赤に染めた酔っ払いが俺に向かってそう叫ぶ。
完全に出来上がっている彼女を見て、ため息を一つ吐き出し、彼女が座っている席に近づく。
テーブルの上には空になったジョッキが置いてあり、これからこの酔っ払いの相手をすると思うと軽く眩暈を覚える。


「俺だって忙しいんだよ。月曜から飲みに誘うとか頭おかしいだろ」
「はあ?頭おかしいって偉そうに。航也が私にそんな口利いていいと思ってるの?」
「思ってるよ。月曜から飲みに誘うような分別のない女にはね」


イスに座り、通りがかった店員さんにウーロン茶を注文すると、この酔っ払いは「ウーロン茶じゃなくてビール!!」と大声で叫びやがる。


「ウーロン茶で」
「だからビールだって!」

「……えっと、どうしますか?」



困りながら俺の顔を見る店員さんに頭を抱えながら「ビールでいいです」と告げると、目の前の酔っ払いは満足そうに頬を緩め、またジョッキに口をつける。
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