初恋の行き先
「本当にお前何なの?俺も明日出張だって言ったよね。しかも大事な商談があるって。今日だって本当は来たくなかったけど、お前が電話越しで死ぬ死ぬ叫ぶから、来てやっただけで―――」
「だって本当に死にそうなんだもん。飲まないとやってられないくらいしんどくて、辛くて」


そう言いながら、涙を流す彼女を見ていると、先が思いやられる。

明日は七時に駅に行く予定だから、30分前には家を出たい。
明日の出張は大事な商談だから、ちゃんと睡眠とりたいし、どうにかして日付が変わるまでには家に帰りたい。

そんなことを頭の中で考えるけど、今までの経験上、この酔っ払い具合は12時を過ぎる、絶対に。
どうにかしてそれだけは阻止しなければ。


「葵。簡単に死ぬ死ぬって言っちゃダメだよ。命は大切にしなくちゃ」


今まで出したことのないような一番優しい声で命の大切さを説いてみる。
この方法が正しいのかはわからないけど、俺を呼び出した理由なんて聞いてしまうと確実に日付が変わる。
確実に。
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