いちばん近くて遠い人
「あの……電話………が。」

「あぁ。鳴ってるな。」

「だってさっきの人……。」

「あぁ。」

「まだ……ううん。いいんです。」

 まだたくさんの寝させてくれない女の人がいるんですか?

 そんなこと聞けない。
 それでもいいってそんな加賀さんでいいって言ったんだから。

「南……。今は俺だけを見て。」

 加賀さんこそ。

 その言葉は甘い吐息に塞がれて声になることはなった。



 いつの間にか眠っていて私の携帯のアラームが控えめに鳴っていた。
 大音量じゃなくて良かったと体を起こして鞄から携帯を取り出す。

 本当に……キス、だけだった。
 幾度となく加賀さんの色気に溺れてしまいそうで…………。

 まだ眠っている加賀さんが腕を伸ばして座っている私の腰を抱き寄せた。

「ん……ミチ………。」

 え……今、なんて。
 ミチって美智さん?

 そんな嘘………。
 夢見心地な時間から一気に突き落とされた気がした。

 まさかの美智さん。

 美智さんを抱き寄せて寝言で名前を呼ぶような関係だったってこと?







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