いちばん近くて遠い人
 武蔵と自販機の前でする話じゃないことを話していた。
 誰も来ないし、そんなこと気にしてられないくらい参っていた。

「南がキスしてから素っ気ない。
 避けられてる。」

 まさか武蔵にこんな話をするとは思ってもみなかった。
 半分は独り言のぼやきではあるのだけれど。

 深いため息とともに気持ちを吐き出す。

「俺、自信なくすわ。」

 武蔵は面白がって意見した。

「口が臭かったんじゃないか?
 それとも下手だったんだろ。」

 やっぱりこんな奴に言うんじゃなかった。

「武蔵……お前…。
 試しにキスしてやろうか!!」

「馬鹿!やめろ!」

 武蔵を押さえつけてふざけているところへ隼人がやって来た。
 武蔵に顔を近づけようとしているところで目が合った。

「やっぱり加賀さん……………。
 男が良かったんですね。
 南ちゃんに言わなきゃ。」

「ちがっ。」

 馬鹿らしくなって武蔵を解放すると再びため息を吐いた。

 武蔵は笑う。

「色ボケだな。
 聞けばいいだろ。本人に。」

「聞けたら苦労しない。」

 本人に何をどうやって聞くんだよ。

 頭を抱えるともう一度ため息を吐いた。










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